
本物を超えるか!?進むフードテック
「フードテック」とは、「食:フード」と「テクノロジー」を合わせた造語で、最新技術を用いて新しい食品や調理法を開発することを言います。アメリカをはじめ海外ではフードテックは浸透していて、日本では徐々に広がっています。そして飲食業界でも導入がはじまっています。
食糧危機の備えにはじまったフードテック
大豆などの植物由来のたんぱく質でつくった大豆ミートをご存じの方は多いでしょう。大豆ミートは代替肉と呼ばれるフードテックのひとつです。フードテック先進国のアメリカでは、大手ハンバーガーチェーンがパテにしたり、まちのスーパーの店頭に並べられたりと、身近な存在になりつつあります。フードテックはカロリーやコレステロールが低いため、健康康志向の高まりにマッチすることも市場の拡大を後押ししているようです。
そもそもフードテックは、将来的な食料危機へ備えるためにはじまりました。国連では、2050年には世界の人口が97億人になり、たんぱく源である肉の生産量が追い付かなくなると推計していて、その対策としてフードテックが求められるようになったのです。また、牛のゲップに含まれるメタンガスは地球温暖化を加速させる一因であることがわかっていて、フードテックを拡大し、家畜動物を減らすことは環境問題にも貢献すると期待されています。そして日本の食の海外依存度が高いという課題を解決する手段にもなり得るため、フードテックはさまざまな可能性を秘めた技術といえます。
外食メニューにもフードテックが
国内では現在、大塚食品や伊藤ハム、味の素、IKEA……とフードテックに取り組む企業が増えています。2020年は日本の『代替肉元年』と言われるほど普及が進み、飲食業界での動きも活発になっています。
□コメダ珈琲店
銀座に「KOMEDA is(コメダイズ)」というプラントベース(植物由来)専門の喫茶店を開業しました。同店一押しのメニューは肉や魚を使わず、大豆でできたパテ(代替肉)を使ったオリジナルのバーガー。こだわりの野菜を入れることに加え、天然醸造、熟成の醤油や味噌などの調味料を活用することで、植物由来のバーガーながら濃厚で満足度の高い味わいに仕上げているそうです。
□フレッシュネスバーガー
100%植物由来の大豆パテ(代替肉)と低糖質バンズを使った『THE GOOD BURGER』シリーズを発売しています。メニューは『THE GOOD BURGER(テリヤキ)』『THE GOOD BURGER(アボカド)』があります。
テリヤキ味を深い味わいの醤油麹を塚って出したり、こってりしたアボカドを組み合わせたりすることで、ジューシー感を高めているとのことです。
□焼肉ライク
社会問題解決型フードテックベンチャーのネクストミーツと焼肉用の代替肉「NEXTカルビ」と「NEXTハラミ」を共同開発し、焼肉ライク全店舗で販売しています。
「NEXTカルビ&NEXTハラミ」は、添加物を使用せずに肉そっくりに作られていますが、一般的な焼肉と比べると脂質が半分以下で、たんぱく質は約2倍と栄養価に富んでいます。焼肉を楽しみながら、健康面に注意したい消費者の支持を早くも集めています。
新型コロナがフードテックを促進
フードテックが盛り上がっている背景には、新型コロナの感染拡大もあります。野生動物を食べる習慣が新型コロナ発生に関連している可能性があるという意見があり、人工的に食品をつくり、これを食料としていけば、こうしたリスクを排除できると考えられているのです。また、繰り返し発生する鳥インフルエンザや豚コレラなどの発生を抑えることもできるかもしれないという声もあります。
海外では、代替肉だけではなく、代替生まぐろや代替サーモンといった魚介類の開発が進んでいるそうです。そして日本では現在、ウシなどの動物から取り出した少量の細胞を、動物の体外で増やしてつくる「培養肉」の研究が盛んになっていて、同時にフードテックの品質のルールを定める動きも進みだしています。今後、世界の食文化に影響を与えていくであろうフードテックから目が離せません。