
「からあげ」が飲食店を救う?!市場が急拡大
老若男女が好きな「からあげ」を提供する専門店が今、続々とオープンしています。から揚げをメインに提供するイートイン、テイクアウト店の市場規模は、2019年の853億から2020年には20%以上増の1050億円にまで拡大しています。
大手が続々参入
「揚げ物といったらからあげ」という人、揚げ物をしたくない家庭、外食自粛による夕食難民……こうした人々の食卓に幸せにする「からあげ」テイクアウト。
このからあげ人気にいち早く目をつけたのが株式会社すかいらーくレストランツでした。同社では、コロナ禍以降に、全都道府県に店舗を構えるファミリーレストラン「ガスト」において、から揚げ専門店「から好し」の併設を増やしています。同店のからあげの特長は、にんにく・生姜は使わず、醤油ともろみを使用したオリジナルのタレで漬け込み、店で毎日丁寧に衣づけしてつくっていることなのだとか。併設は、2021年3月末までにガスト1332店舗のほぼ全店で完了したそうです。
実は外食自粛による経営不況を受け同社は、ガストなど計200店舗以上を閉店しましたが、テイクアウト需要に力を入れ、従業員を配置転換するなどして雇用を維持することに成功しています。中でも急成長のから好しは雇用と売り上げ回復の一端を担っているそうです。
ワタミグループではテイクアウトに特化した「から揚げの天才」のフランチャイズ展開を20年6月から本格化させています。それまでは出店ペースは穏やかだったものの、1年足らずで約100店舗を出店しています。
看板メニューは、握りこぶしくらいある特大サイズの「デカから」。揚げたての味を短時間で提供することと、グラム売りではなく1個単位売りにこだわることで差別化を図っているそうです。また、テイクアウト時のビニール袋には、バイオマス素材25%配合のエコ袋を使用しているとのこと。レジ袋有料化は、海洋プラスチックごみ問題の一因といわれるプラスチックを用いたレジ袋に対するものであり、環境に配慮した素材のレジ袋には適用されていないの同店では提供は無料。お客さまは気兼ねなくビニール袋を使うことができそうです。
省スペース省エネルギーで出店
昨年までに続々と開店していたタピオカドリンク店がコロナ禍で閉店に追い込まれています。東京では、その跡地にから揚げ専門店がオープンしている例が数多くあります。
から揚げ専門店の場合、出店に最低限必要なのは、省スペースの建物とフライヤーと冷蔵庫だけで初期費用は700万円程度。一般的な飲食店オープンにかかる費用の3分の1ほどで済みます。このため駅前などの好立地なところでも出店しやすいのです。また調理法は複雑ではないため、技術力が高くなくても、その店独自の味を再現可能なところも、から揚げ専門店の出店を後押ししているようです。
コンテストや検定でいつでもからあげ市場をお祭りに
からあげ市場が成長しているのは、盛り上げるに十分な下地が整っているためともいえます。例えば“唐揚を愛する人々の団体”である一般社団法人日本唐揚協会では、「からあげグランプリ」を開催し、毎年話題を呼んでいます。さらに、からあげ検定を実施し、合格した人をからあげの魅力を広く発信する会員にしたり、「からあげ強化月間」として、からあげ専門店、外食、総菜売り場で唐揚協会公認の共通ロゴを展開して販売活動を強化したりといった取り組みをしています。からあげを扱う店、からあげ好きを広く巻き込むことで話題を生み、からあげへの興味関心を高めることに成功しているのでしょう。
小規模の店舗であっても、店独自の味のからあげを提供していて、ファンがついているケースは多いはずです。そんな人気からあげをウリにしたテイクアウトメニューは売上低迷の突破口になるかもしれません。
一方で、昨今の出店ラッシュは供給過多につながるという意見も。味以外にもこだわりを持つことが求められそうです。