
コロナ禍、飲食店スタッフの モチベーション管理で大切なことは?
新型コロナの感染拡大により経済が停滞している昨今、労働者に関するさまざまな調査が行われています。多くの調査結果でわかってきたのは、労働者のモチベーションが低下していることで、これは飲食店スタッフにも当てはまることです。コロナ禍、飲食店スタッフのモチベーションをどう保っていけばよいのでしょうか?
「働きたいのに働けない……」
飲食店経営者は「やりたいこと」はたくさんあるのに「できない」状況に苦慮していると思います。それはスタッフも同じで、働きたいのに働けない状況が長期化し「もう仕事をしたくない」とやる気を失っていることは少なくありません。「この業界はどうなるのだろう?」「自分は将来も仕事が続けられるのだろうか?」と漠然とした不安を感じている人もいるようです。経営者には平時とは異なる視点でスタッフのモチベーション管理・維持をしていくことが求められます。
人間には5段階の「欲求」がある
「マズローの欲求5段階説」をご存じですか? これはアメリカの心理学者アブラハム・マズローによって提唱されたモチベーション理論です。人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低次の欲求が満たされれば、次の高次の欲求を満たすべく行動するというものです。
●生理的欲求:食事、睡眠など生きていくための本能的な欲求。
●安全の欲求:健康の維持や安全な環境での生活などリスクや危険から身を守りたいという欲求。
●所属と愛の欲求:集団に属したり仲間を求めたりして孤独や不安感をなくしたい、さらには、愛されたいという欲求。
●承認の欲求:他者から価値ある存在だと承認されたり、尊敬されたりしたいという欲求。
●自己実現の欲求:自分の能力や可能性を最大限に発揮したいという欲求。この欲求には上限がないため、成長につながる。
コロナ禍では低次の欲求も満たされていない
マズローの欲求5段階説に飲食業界で働くことを当てはめると次のようになります。
●生理的欲求::きちんと収入を得たい
●安全の欲求:働ける環境を維持したい
●所属と愛の欲求:一緒に働く従業員や上司と良好な関係でいたい
●承認に欲求:仕事で成果を出したい
●自己実現の欲求::仕事を通して社会貢献をしたい
コロナ禍は、基盤となる「生理的欲求」や「安全の欲求」でさえも、完全には満たされていない状況であるといえ、スタッフがモチベーションを維持することを難しくしています。まずは補助金や給付金の活用、店舗の感染症対策の徹底の他、感染リスクから出勤を望まないスタッフには無理強いしないといったことができているかを見直してみましょう。
そのうえで、従業員とできる限りのコミュニケーションをとっていくことが求められます。なぜなら、「所属と愛の欲求」を満たすことにつながりますし、人は他者とつながったり、話したりすることで、知らず知らずのうちに不安やストレスの発散できるためです。また、メンタル面に不調が起きていることに気付けるのは、本人よりも周囲の人の場合が多いので、定期的なコミュニケーションは非常に大事です。
コミュニケーションの方法としては次のようなことが考えられます。
□その日いらっしゃったお客さまとのエピソードやいただいた言葉をスタッフ間のLINE等で流し、店舗に属している、一緒に働いていることを感じられるようにする。
□定期的に経営陣からスタッフへビデオメッセージを配信する。このとき、マイナスなメッセージはシャットアウトし、「できること」や「ビジョン」の共有など前向きな発信にする。
□スタッフ間のコミュニケーションの活性化を目的としたWEB飲み会やWEBランチ会を開催する。対面の機会が減ると、相談や雑談の機会が減る傾向にあるため、気軽に顔を合わせられる時間をつくることは大切。
□雑談に経営陣が「運動不足にならないように最近がんばっている」「ウオーキングの途中でこんなものを見た」といった内容を入れる。活動量の低下はメンタルの不調につながることがわかっているため、自分の取り組みを伝え、従業員の運動不足の解消とメンタル面の健康を促す。
厳しい状況が長期化し、仕事に身が入らず、思わぬミスをしてしまうスタッフもいるでしょう。そんなとき経営陣には「失敗は誰にでもある」「次はこうしよう」といった言葉を掛ける余裕が欲しいものです。
コロナ禍のような非常時においては、スタッフの仕事に前向きになれない気持ちに寄り添うことも、モチベーションを取り戻すために大切なことといえそうです。